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学問のすすめ

 
 福沢諭吉(1835〜1901年)の『学問のすすめ』という本の名を知らないという人は少ないでしょう。

 本のタイトルは非常に有名である反面、読んだことあるという人は少ないのではないでしょうか?

 この『学問のすすめ』には何が書かれているのか?

 学問のすすめは、全部で17冊からなる小冊子で4年以上の歳月をかけて刊行されました。明治13年に合本の形となり発売されますが、その中に「学問のすすめは1より17に至るまで17編の小冊子、何れも紙数10枚ばかりのものなればその発売頗る多く、毎編凡そ20万とするも17編合して340万冊は国中に流布したる筈なり」という記述があります。

 340万冊の大ベストセラーですね。しかも、合本の定価は75銭。当時の巡査の初任給が4円だったらしいので今の感覚だと3万円を超える価格です。

 なぜ、人々は高価な本を必死に読み漁ったのでしょうか?

 「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云へり」

 学問のすすめの有名な冒頭文です。その後に書かれているのが、「されども今広く此の人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しき人もあり、富めるひともあり、貴人もあり、下人もありて、基有様雲と泥との相違あるに似たるは何ぞや。」とあります。

 天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らない。なのに貧富の差や地位の差など雲泥の差が出来てしまうのはなぜか?と言っています。

 その理由こそが「ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり」と書いています。

 これに当時の青年たちは強い感銘を受け『学問のすすめ』は大ベストセラーになったんです。

 江戸時代では身分制度がありましたね。頑張っても頑張っても基本的には農民は農民。商人は商人と職業を変えることが難しい時代。しかし、明治になり身分制度が廃止されます。

 さらに「学制」が1872年に発布されます。これで住民の負担で地域ごとに小学校がつくられ子供を学校に通わせることを強制しました(国民皆学)。当初は、多くの国民がこれに反対していたんですね。学校の設置、維持費、教員の給与も住民の負担であり、労働力であった子供を授業料を払ってまで学校に行かせなければならないので学制反対一揆なども起こってします。ですが、その後30年もするとほとんどの子供が通学するようになるんですね。

 なぜなのか?

 身分制度が廃止され、貧しくても小学校に通い優秀な成績をとれば将来の道が開けることを知ったんです。教員になるための師範学校や軍人の為の陸軍士官学校は授業料が無料ですから成績優秀なら教員や軍人になれますし、その後、大学まで行ければ学者や高級官僚にまでなれます。ですから、教育の熱が一気に高まったんですね。


 『学問のすすめ』が初編が発行されたのが1872年ですから、まさに学制が発布されたころ。「学問をすれば、貴人となり経済的にも裕福になるが、そうでなければ下人となり貧しい生活をすることになるぞー」だから”学問をしなさいよ”と世の中にうったえたんですね。それに多くの人が感銘を受けたわけです。

 ただし!!!

 学問を身につけることは、一身の栄達のためではない。独立のためだ。といいます。

 これは、現代の私たちにも考えさせられるところが十分にあります。

 一身の独立とは何か?

 「自分にて自分の身を支配し、他に依りすがる心なくを言う。自ら物事の理非を弁別して処置を誤ることなき者は、他人の知恵に依らざる独立なり」

 さらに、諭吉はこうも言っています。

 「独立の気力なき者は必ず人に依頼す、人に依頼する者は必ず人を恐る(おそれる)、人を恐れる者は必ず人に諂うものなり。常に人を恐れ人に諂う(へつらう)者は次第にこれに慣れ、その面の皮鉄の如くなりて、恥ずべきを恥じず、論ずべきを論ぜず」「立てと言えば立ち、舞えと言えば舞い、その柔順なること家に飼いたる痩犬の如し、実に無気無力の鉄面皮と言うべし」

 う〜ん。なかなか「グサッ」とくる文章ですね。

 他人に頼らず自分で物事の判断が出来る人間になれ!これを目指そうとしない人は人に依頼する。そういう人は人を恐れる。恐れる人は人にへつらう。それはまるで人に飼いならされた痩せ犬のようだってことです。

 また、福沢諭吉は当時の時代背景においても一身の独立は大切だと言っています。

 「独立の気力なき者は、国を思うこと深切ならない」「外国に対して我国を守らんには、自由独立の気風を全国に充満せしめ、国中の人々貴賊上下の別なく、その国を自分の身の上に引き受け、智者も愚者も」

 明治初期ですから、このままではいつ外国に日本がつぶされてしまうかっていう不安があった頃。一身の独立は家の独立につながり、そらが国家の独立につながると何度も欧米を見聞した福沢諭吉は伝えたのです。日本国民は一丸となり、列強国からの脅威をはねのけよう。そうせねば、独立は守れないと危機感も募らせていたんですね。

 現代でも感じるところのある『学問のすすめ』。一度読んでみると当時の人々同様に感銘を受けるところは非常に大きい本です。